趣旨

全国で多発する多様かつ複合的な災害への備えが求められるなか、大分大学ではクライシスマネジメント機構を設置して、減災・復興デザイン教育研究センター、グローカル感染症研究センターおよび医学部附属病院災害対策室が組織の枠を超えて活動しており、災害・医療情報を適切に管理・共有するシステムの開発や事業継続計画(BCP)等を推進しています。このような経緯から大分大学ならではのテーマとして「いまそこにある危機への対応」を選択したしだいです。

さて、災害医療にかかる病院のBCPは、災害拠点病院に義務づけられたことから策定されている病院も多いと思われます。昨今の大阪急性期医療センターやつるぎ町立半田病院のランサムウエア被害報告を鑑みて、サイバーセキュリティへの関心が大きくなり、IT-BCPの重要性が高まっています。BCPとIT-BCPは関連が深いはずですが、マネジメントする部署が異なるためか、同じ土俵で協議されることが少ないと感じています。大分大学では、私が両方の担当部署のマネジメントしていることから、このような企画を準備いたしました。

 大規模な災害(ランサムウエア被害も含む)においては、指揮命令系統をはっきりさせて、情報管理をしっかりと行い、適切は評価を行い計画を立てて対応することが重要であり、情報を制する者が災害を制すると言われています。特別講演1におきましては、大分大学減災・復興デザイン教育研究センター鶴成悦久センター長に「防災・減災のための災害情報活用プラットフォーム(EDiSON)」の演題で、ご講演いただきます。このプラットフォームは、災害のあらゆる情報を管理・共有し、AIを使った被害予想なども行っている画期的なシステムとなっています。特別講演2では、大阪急性期医療センターのインシデント発生時に現地の総括責任者として活動されました日本電気株式会社ヘルスケア・ライフサイエンス事業部門医療ソリューション統括部 中島誠一郎事業主幹にご講演いただきます。質疑応答の時間を長めに取っておりますので、実際の現場担当をされた経験から、報告書に記載のないお話も伺えると思います。また、最終セッションでは、BCPとサイバーセキュリティ対策に関する3演題を大分大学から用意しました。

 本研究会は、コロナウイルスが5類になったこと、特別講演2などでは機微な内容の議論が予想されることより、現地開催のみとさせていただきます。大分の海の幸、山の幸や温泉もお待ちしておりますので、ご参加をよろしくお願いいたします。

大分大学医学部附属病院医療情報 下村 剛
令和5年9月1日